安曇野の田園を犬たちと歩く。常念岳や北アルプスの白く輝く姿は例年とあまり変わらないが、里にはいっこうに雪は降らず、これからの春に芽吹く緑たちには、水分が不足しているように感じる。
そんな自然とは別に、別の恐ろしい自然界の目に見えない脅威が今、世界中に広がっている。中国の武漢発らしい、新型コロナウイルスの脅威である。
人類は今までに何度も、こうした流行病とも呼ばれる疫病にみまわれ、戦争による死者をも超える膨大な数の人々が命を落としていることは歴史に刻まれている。
古くは聖書の時代にも、イスラエル民族の自由な脱出解放を阻んだエジプトに、恐ろしい疫病がもたらされたと、出エジプト記にモーセによって記録されている。
さて、ネット情報によると、今回の新型コロナウイルスの拡散と脅威の中、ノーベル賞作家(アルベール・カミュ(1913~60)の傑作小説『ペスト』が、売れ始め、在庫が底をついて来ているとのニュースが目に入った。
一度学生時代に読んだかもしれないが、今回は電子書籍版を購入して、今夜から読み始めた。今が今だけに、緊張感を持って引き込まれている。
地中海に面した仏領アルジェリアの都市・オラン。おびただしい数の鼠の死骸が発見され、人々は熱病に冒され始める。ペストという「不条理な厄災」に見舞われた街で、人々はいかに生きてゆくのか──。
作中の牧師にとっては、神学的に全ては神が与えられし、ものだった。しかし、子どもの無残な死を目のあたりにして疑問を抱く。判事の子どもの苦しむシーンなど、それぞれが今まで信じて来たものを捨てなくてはいけない現実は切ない。
著者カミュの哲学的問い「人生に意味はあるのか」、この「不条理」について考えさせられる作品である。若い人たちにとっては訳文がやや硬いと感じるかもしれないが、味わい深い文体である。ぜひ一読をお薦めしたい。
作中の牧師にとっては、神学的に全ては神が与えられし、ものだった。しかし、子どもの無残な死を目のあたりにして疑問を抱く。判事の子どもの苦しむシーンなど、それぞれが今まで信じて来たものを捨てなくてはいけない現実は切ない。
著者カミュの哲学的問い「人生に意味はあるのか」、この「不条理」について考えさせられる作品である。若い人たちにとっては訳文がやや硬いと感じるかもしれないが、味わい深い文体である。ぜひ一読をお薦めしたい。